山瀬理恵子先生Presentsおつまみアス飯

キンキンに冷えたビールがおいしい夏ももうすぐ終わりですね。まだまだ残暑で暑い日が続きそうですが、暦では徐々に秋へと移り変わります。秋の涼しさに身を寄せながらお月見で日本酒を一杯…なんて日もすぐそこです。今回は兵四郎マガジンでおなじみアス飯料理研究家・山瀬理恵子先生にお酒、特に日本酒にぴったりなおつまみをアス飯として考案いただきました。栄養素のバランスを最大限に引き出したアスリートが食す家庭料理・アス飯。お酒を飲みながら健康的におつまみを食べることができます。また、アスリートとお酒の関係性についても実際にあった理恵子先生が体験したエピソードを交えてご紹介いただきます。ここでしか聞くことのできない貴重なお話ですのでぜひご覧ください。

アスリートのアルコール摂取に要注意!?

結論から申しますと、アスリートのアルコール摂取は原則“禁止”が鉄則。というのも、かれこれ10年ほど前になりますが、夫の山瀬功治(プロサッカー選手)が、当時所属していたJリーグクラブの、チーム専属スポーツ管理栄養士の先生による定期栄養講習会でも、スポーツ選手にとって練習後や試合後のアルコール摂取がいかに良くないかが綴られた資料が配布され、その後、1時間近くにも渡り、アルコール摂取時のリスクをお話いただいたことがありました。
アスリートは強烈な紫外線を浴びながらでもハードワークを重ねるシーンが数多く、日々、激しい消耗が避けられません。例えばJリーグでは、1週間スパンで耐えず次の試合がやってきます。ベストコンディションに調整を重ねる最中のタイミングで飲酒をすれば、筋痙攣を起こしやすくなったり、傷や打撲、捻挫などの怪我完治の遅延、筋肉グリコーゲンの回復を遅らせるなど、復活の妨げに。また、アルコールの摂取は水分補給になるどころか、体内の水分量を減らし、脱水症状を引き起こす危険性も。これら様々なリスクを考えると、肉体のみならず内臓も疲労しているスポーツシーンでの飲酒は“自分へのご褒美”とは言い難いのではないでしょうか。
しかしながら、アスリートである夫に寄り添い20年近くものストイックな生活で得ることのできた、理論では語り尽くせない、お酒にまつわる印象的なエピソードがありますので、今日はこれを皆様にお話ししたいと思います。

たびかさなる怪我との闘い

若かりし頃の夫は大怪我の連続。全身麻酔をする手術を4度も経験し、3年以上にも渡る長期離脱やリハビリを繰り返しました。たとえ復帰できたとしても、ベストパフォーマンスを取り戻すには長い時間を要します。肉体的のみならず、血の滲むような精神的苦しみを味わいました。寝ても覚めても、生活の全てがサッカーに費やされる日々が続きます。
夫はもともと、真面目で努力家、強烈な向上心と信念を宿している選手です。怪我による不具合を抱えながらのプレーや、思うように動けない自分自身への不甲斐なさ、痛みとの闘いなど、先の見えないトンネルから抜け出せなくなることもしばしば。かといって、投げやりになるタイプでもなく、常に200%全力で、がむしゃら。手を抜かないどころか、頑張り過ぎてしまい、ついには、監督やコーチングスタッフから自主練習を禁止されたり、必死がゆえに、かえって怪我を悪化させてしまうなどの悪循環に陥っていました。

切り替えることの大切さ

そんな様子を見かねて、あるOBの先輩がおっしゃった言葉があります。「功治みたいな生き方をしていたら精神的におかしくなる。あまりに真面目すぎるのも、サッカー選手としての現役引退をかえって早めてしまうことになるよ。いくらもがいたって、世の中には理不尽なこともあれば、どうにもならないことだってある。時間が解決してくれることだってたくさんある。怪我をしている時だからこそ、時にはお酒でも呑んで、しっかり休んでリフレッシュするだとか、切り替えが絶対的に必要。理恵子は功治と一緒になって必死に一喜一憂して、抜きどころをつくってあげられていないんじゃないか。」
当時はショックに感じたはずの言葉。しかし今となれば、この一言があったからこそ選手の妻としてのサポートの真髄を知ることができたと思うのです。荒波にも翻弄されることなく、いかなる時も俯瞰。余白さえ持てるようになりました。

乾杯が繋ぐ夫婦の絆

いつだったか、試合メンバーから外され肩を落として帰宅した夫に「今夜は一緒にお酒でも呑もうよ」と、私の方から夫を誘ったことがあります。これは『どんな時も、何をしていようと私はあなたの妻であり味方。支えます。安心して委ねてください。』という、自分なりの強い意思表示でもありました。あの時に夫と交わした乾杯は、まだ見ぬかけがえのない未来を作る決起集会のようなもの。相手を思いやるお酒の場が、夫婦間のあたたかなコミュニケーションツールになったのです。普段はなかなか言えない胸の内を伝える瞬間の、そっと背中を押してくれる“ほろ酔い”気分は、かけがえのない優しさに包まれた魔法の時間でした。

出会いの場とともに増えていった信頼の数々

サッカー選手という特殊な職業柄、サッカー一筋のストイックな性格も重なって、これまでは外部コミュニケーションを増やしづらい生活を送ってきたように思います。『妻である私以外の支えや抜け道みたいなものを作ってあげたい。』お酒の席を通じて別の世界を見たり、他の誰かとの出会いの中で、サッカー以外の喜怒哀楽があること、人情や、ぬくもりに触れてほしい。シビアな環境から一旦頭を切り離し、更なる多くの鼓舞を得ることの方が、夫にとってのプラスは格段に大きくなるのではないかと感じたのです。無論、夫は性格上、節度を守る人間なので、お酒におぼれるといった心配は皆無でした。

各地で重ねたご縁、笑顔の輪の中で

宴席で、見ず知らずのお客様やサポーター、大勢の方から、山瀬くん、山瀬くんと憧れや親しみを込めたあたたかな声をかけていただいたことで、自分はまだまだ必要とされ、もっともっとやれるんだという奮起に繋がり、気づけば、生活に笑顔が増えていきました。「仲間」と呼べる人たちが鈴なりに増え、どれほどの励みになったことでしょう。全国各地で確固たる信頼関係を築くことのできた、数々の飲食店の大将や女将さん、お店で出会ったたくさんの皆さんの声援は、今でも私たち夫婦の生きる力になっています。
あれから長い月日を経て、夫は良い意味で肩の力が抜け、世界中にいる誰かのために夢を運んでくれる、人間味あふれる選手へと成長しました。20年経った今でも元気にピッチを走り続けていられるのは、当人の努力のみならず、お酒の場が繋いだ、星の数ほどの人々とのご縁と、永遠に降り注ぐシャワーのような、無償とも言える愛のおかげです。

最後に私の好きな言葉をご紹介します。

『人は、乾杯の数だけ幸せになれる。何か良いことがあったら乾杯。何か残念なことがあっても乾杯。一日の終わりを、誰かと今日も乾杯!と締めくくることができたなら、それは幸せだ。』映画・幸せのパンより

 

01 納豆と挽肉の洋風揚げ包み焼き

【材料】2人分

合いびき肉・・・100g
納豆・・・1パック
たこ・・・50g
トマト・・・1/4個
干し椎茸・・・2個
油揚げ(すしあげ用)・・・6枚
バジルの葉・・・4枚
にんにく・・・1片
生姜・・・1片
パルメザンチーズ・・・大さじ3
オリーブオイル・・・適量
割烹がえし・・・大さじ1
焼きのりばら干海風薫・・・大さじ3

【作り方】

1.フライパンにオリーブオイル、にんにくと生姜のみじん切りを入れて火にかける。

2.1の香りが立ってきたら、合いびき肉、細かく切ったたこ、トマト、干し椎茸を入れて肉の色が変わるまで炒める。

3.2に焼きのりばら、パルメザンチーズ、納豆、割烹がえしを入れてひと回しして火を止める。

4.半分にカットした油揚げに、3で仕上がった具材に細かく切ったバジルの葉を混ぜ込み、6等分にして詰め口を爪楊枝で止める。

5.魚焼きグリルなどで表面がこんがりするまで焼けたら、できあがり。

空腹時にいきなりお酒をいただくと、胃腸からのアルコール吸収が早くなり、二日酔いのリスクが上がります。それを防ぐためにはやはり、飲酒をする前に食べ物を体の中に入れておくことが大切。特に、胃での滞在時間が長く、消化に時間のかかる〈たんぱく質〉や〈脂質〉を多く摂取すること、お酒を飲みながらでもヘルシーな心持ちでいられる栄養価の高い食材を意識。油を使用する植物性たんぱく質の油揚げや、胃に長時間留まってくれるチーズ(今回はパルメザンチーズを使用)など、アルコール吸収を緩やかにしたり、二日酔いになりにくい可能性のある嬉しい食材をふんだんに用いた、最強のコラボレシピの誕生です。

合いびき肉

豚肉、牛肉などに含まれる動物性たんぱく質や、海苔や納豆や油揚げなどに含まれる植物性たんぱく質をバランスよく食べることで、アミノ酸バランスを整えていきます。

納豆

納豆はムコ多糖類を含み、胃の粘膜を保護する役割が期待できるだけでなく、糖質の代謝を助け、エネルギーを作り出す〈ビタミンB1〉や、〈アセトアルデビド〉の働きを抑える〈ビタミンB2〉も含まれています。二日酔いや悪酔いを防ぐにはアルコールを体内にゆっくり吸収させ、アルコールの血中濃度を緩やかにアップさせることが大切。納豆には様々なタイプの頭痛を緩和させる働きのある〈マグネシウム〉も豊富です。

海苔(焼きのりばら干)

海苔(焼きのりばら干)は、炭水化物の吸収を抑え、血糖値も抑えるインスリンの材料の〈亜鉛〉を多く含んでいます。

椎茸

干し椎茸は、食物繊維の宝庫。食物繊維は胃腸に長く留まり、アルコール吸収を抑制。整腸作用、また糖質の吸収を抑える効果が期待できるだけでなく、〈ナイアシン〉を豊富に含み、アルコールや二日酔いの原因となる〈アセトアルデヒド〉を分解する際の補酵素としても働きます。

トマト

トマトに含まれている〈クエン酸〉は、肝臓内のアルコール分解酵素を活性化させ、二日酔いの原因物質である〈アセトアルデヒド〉の撃退に役立つと言われています。トマトの〈ビタミンC〉にもアルコール分解酵素の活性化作用がありますので、アセトアルデヒドのスピーディーな体外排出に役立つでしょう。またトマトに含まれている〈GABA〉は、肝臓を修復する働きがありますので、アルコール分解で弱った肝臓を元気にする働きが期待できます。

02 鶏肉とわかめと長芋の柚子こしょう和え

【材料】2人分

鶏もも肉・・・100g
絹豆腐・・・1/2丁
卵・・・2個
ちりめんじゃこ・・・大さじ5
長芋・・・3㎝ほど
にんにく・・・1片
大葉・・・2枚
塩、こしょう・・・適量
オリーブオイル・・・適量
兵四郎のわかめ・・・50g(戻していない状態)
柚子こしょう〈赤〉・・・小さじ1、適量

【作り方】

1.ボウルに卵を割り入れ、柚子こしょうを加えて溶かすように混ぜる。

2.1に手で崩した絹豆腐、一口大に切ったわかめ、ちりめんじゃこを入れてさっくり混ぜ合わせる。

3.鶏もも肉に塩、こしょうを適量ふって下味をつけておく。

4.フライパンにオリーブオイル、にんにくのスライスを熱し、香りが立ってきたら鶏もも肉を入れて表面がこんがりするまで焼き付け、柚子こしょうを適量加えて絡ませる。

5.4に2で仕上がった具材を入れて表面が少し固まるまで焼き付け、その後大きく崩しながらさっと炒めて火を止める。あられ切りにした長芋、粗みじん切りにした大葉を添えて混ぜ完成。

 

良質な〈たんぱく質〉を含み、栄養の宝庫の卵、鶏もも肉、じゃこなどの動物性たんぱく質や、絹豆腐、すりごまなどの植物性たんぱく質を摂取し、様々な食材からたんぱく質を摂り入れていきます。いずれもアルコールが肝臓で分解・代謝される時にも必要な〈ビタミンB1〉をはじめとするビタミンB群が豊富です。

 

わかめ

飲酒によって失われた栄養素(飲酒による利尿作用により、ミネラルが大量に排出。体は脱水状態に)を補給するために手軽なわかめをおすすめします。

長芋

低カロリーでダイエット食としても注目される長芋は、〈アミラーゼ〉や〈ジアスターゼ〉などの酵素を豊富に含み、消化を促進。胃の粘膜を保護したり、肝機能を高める滋養強壮食材として飲酒時に重宝します。

ちりめんじゃこ

ちりめんじゃこは動物性のたんぱく質やカルシウムだけでなく、カルシウムの吸収を促す〈ビタミンD〉も豊富。〈タウリン〉や〈メチオニン〉が豊富なため、肝臓の働きを強化してくれます。

大葉

大葉は、二日酔いを和らげる民間伝承食材。大葉に含まれる今注目の成分〈ロズマリン酸〉は血糖値の上昇を抑える効果が期待されています。

納豆と挽肉の洋風揚げ包み焼きで使用

鶏肉とわかめと長芋の柚子こしょう和えで使用

アス飯料理研究家

山瀬理恵子(やませ・りえこ)

小学校教諭を経てサッカー元日本代表・山瀬功治と結婚。京都新聞朝刊にて3年間のスポーツ栄養レシピ・コラム連載を書籍化した著書「アス飯レシピ」を京都新聞出版より2017年8月に発売。アビスパ福岡アカデミーをはじめ、小・中・高などの各教育機関及び企業にて栄養講演、調理実習を開催。食育インストラクターや野菜ソムリエ、アスリートフードマイスターにアロマテラピーインストラクターなど豊富な資格を持ち、様々な分野で活躍中。

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